読了 限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力(エンデュアランス)の科学

限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力(エンデュアランス)の科学を読了しました。2021 年読了本 3 冊目。

最初のまとめ

読み始めの動機

ランニングでの限界突破のため。

概要

人間の限界は数値化できると信じられていたが、実際のところ、数値化しただけではわからない限界を超えて持久力を発揮する例が多数見られてきた。そのような事例を取り上げつつ、限界は何が決めていて、限界に近づくために、どのようなアプローチがあるのかを紹介している本。

感想

本から引用すると、持久走の限界は次のパラメーターで数値化できる。

"最大酸素摂取量(VO2max)"と"ランニングエコノミー"、そして"乳酸性作業閾値"だ。

しかし、実際のところ、これらの数値が高いからと言って、はじき出された記録を達成できるとは限らない。あるランナーの上記パラメーターを用いて計算したところ、フルマラソンを 1:57:58 で走れるという結果が出たという。今日時点(2021年3月22日)で男子フルマラソン世界一の公式記録は 2:01:39 で 3 分以上も異なる。非公式ではあるが、世界一記録保持者のエリウド・キプチョゲ選手が 1:59:40 という参考記録を出し、ニュースになったくらいだ。 1:57:58 は当面のところ達成されないだろう。

これは僕も身に覚えがあることで、現在僕の VO2max は Garmin というスポーツウォッチの計測値によると 51 だ。 V02max が 51 というのは Garmin によると、同性同年齢のユーザーで上位 15% らしく、なかなか優秀な数値だと思う。

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Garmin の機能で予想タイムも見ることができ、これは VO2max などを参照しているらしい。

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これによると 5km を 20:50 で走れるとあるが、こんな速さで走れる気はしないw去年末に、 5km を 23:18 の記録を出して満足したばかりだ。

本の中でも同じタイムで走れる選手の VO2max が異なっているとあり、限界を測るには何か別のパラメーターがあることを示唆している

科学的には死んでもおかしくない状況下に置かれても無事に生き延びた事例、喉のかわきや無酸素状態など限界を超えた各種事例が取り上げられている。限界を超えた挑戦の事例を読んでいると、自分自身も息苦しくなること請け合い。

また、人体を機械とみなし、筋肉に直接電流を流して反応を見る実験なども多く紹介されていて、それらの結果から数値化できない何かが限界を決めていることが分かる。

最終的に限界を決めるのは個人ごとの主観的運動強度によって変わってくるとのことだ。有名な 1 マイル 4 分の壁というのがあり、昔は 1 マイル(1.6km)を 4 分以内で走るのは不可能だと考えられていた。しかし、ロジャー・バニスター選手がはじめて 1 マイル 4 分を切った。すると、その記録が出た翌月にはロジャー・バニスター選手の記録はすぐに破られ、その後、 3 年以内に 15 人もの選手が 1 マイル 4 分の壁を切ったという事例がある。

この壁は個人が持っている、常識が限界を作り上げていた事例で、限界を決めつけて、本来の力をセーブしてしまった可能性が高い。主観的運動強度も同様に、自分はこれくらいでしか走れないと限界を決めつけることで、 100% の力を発揮できなくなっているかもしれない。

当然、無理は禁物だ。限界は自分の主観だと思い込み、普段運動していない人がいきなりランニングをし始めれば、怪我をすることは間違いない。

しかし、適切なトレーニングを行い、限界を超えられる強い精神を作れば、自分自身の限界に近づき、ついには限界を超えることができるかもしれない。そう思わされる内容だった。

まとめ

ランニングに限らず、自転車や水泳など持久系の運動をしている人にはお勧めの一冊。