読了 調査的面接の技法

調査的面接の技法を読了しました。2020 年読了本 25 冊目。

最初のまとめ

読み始めの動機

採用活動に携わり、構造化面接について調べていた際、この本を参照している記事を多く見たため。

概要

面接において、自分の研究項目に対して、インフォーマントからいかに情報を引き出すかが重要だ。ただ、面接は準備せずにおこなっても、目的を達成できない。達成できないどころか、インフォーマントのプライバシー侵害などをしてしまうような危険性すらある。

インフォーマントとの信頼性構築や配慮をしつつ、目的を達成するため、調査的面接の必要性が説かれていく。調査的面接は主観や必要以上のインフォーマントへの共感を排し、面接を知りたかったことを知る場にすることをめざしている。

感想

この本は研究などで一般の人から情報を引き出すためのインタビューにフォーカスしている。そこだけにとどまらず、面接官としていかに候補者から相手の経歴を引き出すか、ユーザーインタビューのような顧客から本音を引き出すというような仕事でも十分に役に立つ。

面接はコミュニケーションの一種であり、大きな括りでは、普通の雑談などもコミュニケーションに分類される。そのため、面接も何も準備せずに臨んでも問題ないと考えるかも知れないが、大きな間違いだと思わされた。

先日、本体ブログで取り上げた構造化面接と、この本で取り上げられている構造化面接は微妙にずれが発生している。

採用活動に携わって部長の工数を削減した話

採用の文脈で語られる面接においての、「構造化面接」はこの本で定義されている「半構造化面接」がもっとも親しいと感じた。

面接でよく構造化面接というのが言われるが、この本では構造化・半構造化・非構造化の 3 つに面接を分類している。その 3 つをまとめてみる。

構造化面接

調査テーマに関する一連の質問事項が事前に決められており、それに沿ってインフォーマントへ質問していく手法。統計的にデータをまとめていくことが多いため、クローズドクエスチョン(はい、いいえとかでこたえられる質問)の割合が多い。

社会調査や世論調査などで多用されている。

半構造化面接

構造化面接と非構造化面接の中間。本から引用すると、半構造化面接の使い所は下記。

何を質問すればよいかはある程度わかっているが、どのような回答がもどってくるか不明な場合に使用するのに適している

ざっくりしたシナリオが決まっている場合に使用され、自由回答を集めることにも適している。

面接の文脈で語られる「構造化面接」は質問事項が決まっていて、回答の想定もするが、回答で何がもどってくるかを正確に知るのは難しい。そのため、「構造化面接」は「半構造化面接」くらいなのかなと感じた。

非構造化面接

構造化面接とは対になり、構造が仮定されていないかほとんど仮定がない場合に使われる。面接により、回答を集め、構造を探る。

会社員がこの本を有効活用するなら

使い所は下記だと考えている。

正社員と業務委託を分ける理由

Web 系エンジニア採用に限った話で、下記認識。

エンジニアが即戦力か否かは GitHub のコードなどで比較的定量的に測ることができる。アウトプットがなくとも、経験年数など定量的なデータで足切りが可能だ。そうなると、定量的なデータ測定に向いている非構造化面接で即戦力になるかどうかの定量的な回答を求める質問で実力を測り、業務委託としてアサインできるかどうかを見るのがよいと考えている。

また、一般の面接手法で言われる「構造化面接」は、大まかな質問シナリオを作るが、ケースバイケースで質問の順番を変えることがある。ビジョンに対する共感を定量的に測るのも難しいため、半構造化面接くらいで考え、ガチガチにシナリオ通りに進めず、臨機応変に対応する心づもりを持っておくのがよいのではないかと考えている。

1on1 と非構造化面接

1on1 は難しいとよく言われるが、難しい理由は非構造化面接だからだ。

非構造化面接はシナリオを想定せずに進めて、もらった回答を元にリアルタイムで構造化を測っていく。構造化されていないため、質問は何をすればいいのか、ひねり出した質問に対する回答をどのように捉えればいいのかは聞く側のスキルに大きく依存する。

1on1 で質問するべき項目は一人ひとり異なってくるため、難しいのは当然。この本にまとまっている、 相互信頼感形成の技法ノンバーバルコミュニケーションの技法 が参考になるので、ぜひ読んでみてほしい。

まとめ

採用に携わる人や、ユーザーインタビュー、 1on1 をメンター側で参加する人など、多くの人にとって役立つ内容がまとまっている。ページ数も 200 ページ足らずなので、ぜひ一度読んでみてほしい。