読了 「学習する組織」入門 ― 自分・チーム・会社が変わる 持続的成長の技術と実践

「学習する組織」入門を読了しました。2020 年読了本 7 冊目。

最初のまとめ

読み始めの動機

組織改善にあたり、学習する習慣をつける施策について学ぶため。また、学習する組織本編は難易度が高いとのことで、いったん入門を買ってみました。

概要

学習する組織本編は難易度が高いとのことで、入門編が発売されました。入門編とはいえ、 400 ページほどあり、これで入門ということは本編はどれくらい難解なんだろう。

学習する組織になるにあたり、本編でも紹介されている 5 つのディシプリン(規律)についての説明。そのディシプリンを取り入れた組織が改善した事例と、ディシプリンの精度を高めるための演習が紹介されている。

Amazon レビューを見たところ、入門でも難解とのことで身構えてましたが、スルスル読めました。なかなかよい本だったので、感想を書く前に重要そうなキーワードを洗い出し、自身の言葉で再度まとめ直します。

学習する組織とは

引用

「学習する組織」とは、目的に向けて効果的に行動するために、集団としての意識と能力を継続的に高め、伸ばし続ける組織です

5 つのディシプリン

学習する組織を作るための原則として、 5 つのディシプリンが体系化されてます。ディシプリンは規律や道といった意味合いで使われてます。

  1. 自己マスタリー
  2. システム思考
  3. メンタル・モデル
  4. チーム学習
  5. 共有ビジョン

自己マスタリーとは

個人の成長と学習に関するディシプリン。学習する組織は組織の話だが、個人の成長なくして達成できないため、自己マスタリーを各自で高めることは必須です。自己マスタリーを高めるには、志を持つ必要があり、志は人生における目的とビジョンに大別されます

目的は方向でビジョンは到達地。

創造的緊張と感情的緊張

ビジョンを描くにあたって、現状との差分を埋めようと努力するのが創造的緊張。創造的緊張をもつことで、自分の能力を最大限引き出すことができる。

対して、感情的緊張は外部からの驚異によって不安要素を高めることで生まれます。

内発的動機づけと外発的動機づけに近い感じですかね。この2つをうまく使いこなすことで、各自の能力を引き出していきます。基本的には、創造的緊張を高めるほうがうまく行きそうです。

システム思考とは

ものごとのつながりや全体像を見て、本質について考えるディシプリン。重要な原則は構造がパターンに影響を与えるです。

構造がパターンに影響を与えるとは

氷山モデルで説明されます。氷山モデルは次のように表され、できごとより下層は表出しません。

  1. できごと
  2. パターン
  3. 構造
  4. メンタル・モデル

反応的な行動であるできごとは下層の見えていないパターン、構造、メンタル・モデルに影響を受けて表出します。行動を変化させるために、表出していない下層に注目する必要があります。

ループ

構造により、 3 のパターンのループがあります。

  1. 自己強化型ループ
  2. バランス型ループ
  3. 遅れ

自己強化型ループはある原因が別の事象にフィードバックを行い、さらに原因である事象に影響が出るループです。マーケティングのバイラルが該当しますね。自己強化型ループはいい方向にも悪い方向にもフィードバックが働き、強化され続けるのが特徴です。

バランス型ループは自己強化型と異なり、原因が結果をもたらし、変化を打ち消すフィードバックをもたらします。収束する方向性をもつので、飽和やボトルネックによる伸び悩みなどで横ばいになります。 バイラルの理想形はプロダクトが顧客に届く->顧客がいい口コミを出す->さらに別の顧客に届くと強化され続けますが、実際は顧客が悪い口コミを出したり、そもそも口コミを出さなかったりもあるため、ある段階で伸び悩みます。これがバランス型の特徴です。

遅れは名前のとおり、時間的な遅れです。結果が出るまでに時間がかかることです

ものごとの変化を作り出すには上記 3 つのループの相互作用のバランスによってもたらされます。

シングル・ループとダブル・ループ

シングル・ループは目標に対する、行動と結果だけに注目した振り返りです。 PDCA とかはまさにこのシングル・ループです。対して、ダブル・ループはそもそもの目標自体や自身のバイアスといった前提そのものの検証も行う高次の学習モデルです

ダブル・ループにあたり、前提の目標自体を見直すためにはビジョンにまで立ち返る必要があります。そのため、学習する組織において、ビジョンは非常に大事なものです。

メンタル・モデルとは

自分自身の経験により積み重ねられた、一般常識です。先に挙げたダブル・ループにおける前提自体の見直し、また氷山モデルのできごとを変えていくにはメンタル・モデルの存在を認識することが重要です。

メンタル・モデルを認識し、修正することで行動を変えていくことができます。メンタル・モデルには決めつけやステレオタイプによる理解がなされるため、学習する組織を目指すにあたって、自身のメンタル・モデルを見直す必要があります。

チーム学習とは

組織における意識と能力の向上を行うプロセスです。メンバーの関係性の質を高め、チームであるとの認識を持つための「合致(アライメント)」を作り出します

合致がない場合、個人の能力はバラバラに向かうため、まずは合致を作り出します。その合致を作り出すために関係性の向上を目指します。関係性の向上のためには、自身のメンタル・モデルを見直し、メンバー間に勝手な解釈による思い込みがないかを見直すことも重要です。

合致を目指すため、組織にはビジョンが必要で、事例としてビジョン・グアテマラが紹介されていました。立場の異なるメンバーがグアテマラの国をよくするためのプロジェクトです。

メンタル・モデルは自身の意識を注目するのに対し、チーム学習ではチームとしての意識と能力に注目します。

チェックインとチェックアウト

会議などの前に、なぜ私はここにいるかを話すことがチェックイン。会議などの終わりに、何を得たかや共有したいことを話すのがチェックアウト。

話すこと、聴くことでチームが合致の状態を作り出せているかの振り返りを行うのが意図のようです。話しすぎる人、聴くだけになっている人の依存の構造を変えていくのに有効。僕は話しすぎる側なので、聴く練習として、取り入れていきたい。

共有ビジョンとは

名前のとおり、組織のメンバーが共有して抱く未来のビジョンです。個人個人が有機的に連携し、行動していくにはビジョンが必要です。また、ビジョンはメンバーが実際に行動するかどうかによって価値が決まります

字面がきれいなだけのビジョンには価値がなく、メンバーがビジョンを実現しようとコミットメントしていけるよう、共有可能なビジョンを作り出すことが重要です。トップダウンにせよ、ボトムアップにせよ、個人のビジョンを語り、傾聴していくことで共有ビジョンが作られていきます。

自己マスタリーでも志が重要とあったとおり、個人のビジョンがないことには共有ビジョンは作れず、組織として意識と能力を継続して高めることはできません。

感想

本編が 600 ページもあり難解とのことで、この入門が書かれたそうだが、入門ですら 400 ページほどあり、難解さはそれなりにある。事例や演習がある分、わかりやすいかもしれない。この入門自体は理解しやすく、学びも多かったので、本編も手に取ってみるつもり。

なんとなく意識していたことが、明確化されたのが一番の収穫。特にメンタル・モデルでも語られているように、自身のバイアスや思い込みがないかを見直すことは重要だと考えている。引き続き、努力していきたい。

ダブル・ループはシングル・ループの弱点を克服したいいループだと思う。シングル・ループなんかあるのか?と思われるかも知れないが、会社員だったら絶対にある評価制度はシングル・ループ的だと考えている。そもそもその評価制度は正しいのかどうか、達成がかんたんすぎたり、難しすぎたりしないかは見直しが発生するべきだが、実際はそんなことはあまり行われず、たんたんと評価されていく。 評価制度はただの一例だが、目標や評価方法が正しいのかは常に批判的思考で考えていきたい。

個人としては自己マスタリーを高めていきつつ、チーム学習のフレームワークを使用して、継続して能力を高めていける学習する組織を目指していく。

まとめ

ディシプリンにより、継続的に能力を高めることを目標とするが、ディシプリンやループといったフレームワーク自体も疑うことを忘れずにしていったほうが良さそう。

ディシプリンに則るにせよ則らないにせよ、組織として継続的に能力を高めることができれば、成長し続けるし、組織に属するメンバーとしてプライドを持てると思う。所属している組織に課題を感じる人はぜひ一読を。

「学習する組織」入門