読了 他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論
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他者と働くを読了しました。2020 年読了本 23 冊目。
最初のまとめ
- 相手のことを理解できない、というメタ認知を得ることが相手のことを理解するにあたって重要
- 相手のことを理解するために、相手のナラティヴを理解する
- 自身のナラティヴも認知し、ナラティヴにとらわれないように気をつける
読み始めの動機
わかりあえなさを感じていたところ、この本を見つけたため。
いま会社で起きてるのこれかな
— 24guchi (@24guchia) July 19, 2020
"目の前で起きていることに腹を立てたりしているときは、なかなかその溝の存在を受け入れられられない" - "他者と働く──「わかりあえなさ」…"著者: 宇田川元一 https://t.co/fPLTMD1ZkB pic.twitter.com/HdaUTwW4MC
概要
最初のまとめにも書いたが、相手のナラティヴを得て、また自身のナラティヴを認知することで他者とわかりあい、働いていくための努力をしていく。
ナラティヴとは
本から引用。
「ナラティヴ(narrative)」とは物語、つまりその語りを生み出す「解釈の枠組み」のことです。 ~中略~ ナラティヴは、私たちがビジネスをする上では、「専門性」や「職業倫理」、「組織文化」などに基づいた解釈が典型的かもしれません。
ナラティヴの違いは価値観の違いを生み、本の題にあるわかりあえなさ
につながっていきます。このわかりあえなさ
を理解することが、他者の理解を進め、わかりあえないはずの他者と働けるようにするというのがこの本の趣旨です。
感想
僕はエンジニアなので、よく聞くのは「営業はエンジニアリングをわかっていない
から、めちゃくちゃな案件を持ってくる」とか、「ディレクターはエンジニアリングをわかっていない
から、変な施策をやろうとする」とか、そういう愚痴を聞くことがあります。専門性が異なる、言い換えると別のナラティヴをもつ人達の理解を互いしないため、このようなわかりあえなさ
が発生するという感想を持ちました。
ただ、エンジニアはもちろん、営業もディレクターも別のナラティヴを持っており、異なる専門性や組織文化を持っているため、違うというのは当然起こりうる話だ。それをわかってないと一言で断言してしまうのは身勝手な話だとも感じる。そうならないよう、この本は相手側のナラティヴに立ち、自分はどう見えているのか主観を排して眺め、ナラティヴを埋めるポイントを考えるという手法を取るように勧めている。
本の題にもあるとおり、組織を拡大するにあたっても参考になる。組織は本来わかりあえない他人同士を明文化された目標を元にひとつにすることだ。そのため、相手のナラティヴを理解することは組織の拡大にあたっても重要な考え方になる。
ナラティヴを踏まえ、相手を理解し、対話するための方法
1. 相手と自分のナラティヴに溝があることに気づき、
2. 相手の状況からどのような溝があり、相手が持つナラティヴを探り、
3. 相手側のナラティヴから新しい関係性を構築できそうな場所を探し、
4. 実際に新しい関係性を築く
なかなか手間だが、どんな立場の相手ともこのフレームワークが応用できそうなので、実際に試してみたい。
私とあなた、私とそれの関係性
本の中で取り上げられている「私とあなた」、「私とそれ」という考え方は対話について考えるにあたり、覚えておいたほうがいい考え方だと思った。
仕事でのビジネスパートナーだから、相手が相手の役割を(道具のように)果たすことを期待するというのは「私とそれ」の価値観
。
対して、相手が自分だったかもしれないと有機的に考える価値観を「私とあなた」
という関係性としている。
仕事をするという上ではなかなかウェットな感じに思えるが、実際の職場はめちゃくちゃウェットな人間関係で出来上がっていること
を忘れてはいけない。
この例えはマルティン・ブーバー氏の「我と汝・対話」にまとまっているらしいので、そのうち読んでみようと思う。
越境
カイゼン・ジャーニーで取り上げられている、越境という考え方もナラティヴを理解し、対話することに近いと感じた。
スクラムの考え方では、透明性が重視されるので、自分から自分のナラティヴをさらけ出す手法がいくつか存在している。そのため、スクラムではわかりあえなさ
があるのは当然という性悪説が前提だと理解した。どうやって越境するのかはカイゼン・ジャーニーにまとまっているので、こちらも合わせて読んでみてほしい。
まとめ
組織論と題にあり、組織を作るマネージャーじゃないとみたいに思われるかも知れないが、組織のメンバーはメンバーで自身のナラティヴを持って、相手に接している事実も存在する。
そのため、組織に属して、関係性が硬直してしまっている人にはぜひ読んでみてほしい本。