行動科学の展開の要約 第 1 章 マネジメント
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入門から応用へ 行動科学の展開【新版】―人的資源の活用を読了しました。2020 年読了本 31 冊目。
この本は全 16 章形式とそれなりに長い本で、良質な学びがあったので一章ごとにまとめていきます。
まずは第 1 章の「マネジメント ある行動科学的アプローチ」です。
最初のまとめ
この章では主に次についてまとめています。
- 混同されがちなマネジメントとリーダーシップの違い
- この本で取り扱う状況対応リーダーシップの定義
- リーダーシップの能力とは
概要
章のタイトルにあるとおり、マネジメントと行動科学的アプローチについてまとまっている本です。最初のまとめに書いたとおり、いきなり気になることが多くまとまっている章です。
マネジメントとリーダーシップの違い
同じようなものじゃないの?って思われることが多いですが、この本では明確に違うものとして定義されています。
本から引用で、マネジメントの定義は下記。
リソースを通して、またはこれらリソースとともに、組織目標達成をめざして働く過程
リソースは人員や資本などを指している。ビジネスに限定されていないので、
二人以上の集団であれば、会社はもちろん、家族や自由参加のサークルのようなもので目標達成を目指すのであれば、それはマネジメントである
。
次にリーダーシップはマネジメントよりも広い概念を指しており、マネジメントはリーダーシップの形態の一つ
だ。
マネジメントとリーダーシップの違いのわかりやすい例としては、
マネジメントは「いかに」「いつ」を問題とし、リーダーは「なに」「なぜ」を問題とする
。
会社で例えると
創業者が強いリーダーシップで「なぜ」、「なに」を達成しようとしているかを問題とし、
創業者についていく役員やマネージャーが創業者のなぜ・なにを達成するために、「いかに」「いつ」達成するかをマネジメントする。
こう考えるとマネジメントとリーダーシップは大きな違いがある。
状況対応リーダーシップの定義
状況対応リーダーシップとは、行動科学的アプローチを踏まえ、実践で役立ち(可能性が高い)かつ習得しやすい技法とわかりやすい共通言語の提供だ
。
状況対応リーダーシップは、よく次の図で説明される。
技法については後の章でまとめられているが、状況を 4 つに分け、状況ごとに振るうリーダーシップが異なるというような技法だ。
この考え方自体はアジャイル開発でも取り扱われている考え方だ。出典を探したところ、この本にたどり着いた。
リーダーシップの能力とは
3 つの能力が取り上げられている。
1. 診断能力 - 影響対象となる状況理解
2. 適応能力 - 状況が生み出す事項に行動やリソースを応用
3. コミュニケーション能力 - 相手が理解できるよう意思疎通
状況対応リーダーシップというだけあり、リーダーシップに必要な能力も同様のことが取り上げられている。
状況対応するためにまず、状況を診断する能力が求められる。
その後、状況に合わせた行動を取る能力。
最後に、フォロワーに意図を正確に伝えることで、意図した目的を達成していく。
わかりやすく、強く必要だと思わされる能力だ。
感想
リーダーシップは生まれつき備わる能力か?という普遍的な疑問がある。
僕もこの疑問をいだいている。みんなを引っ張っていくカリスマは先天的な才能のように見えていて、自分には備わっていないものだと感じていた。
しかし、この本では明確にリーダーシップは後天的に身につけることができる能力
と位置づけている。(先天的に身についていることを完全に否定しているわけではない)
リーダーシップは身につけられる能力と捉えられないと、そもそも分厚い本を読んで、リーダーシップやマネジメント理論を学ぶ必要がなくなる。この本の著者ら、並びにリーダーシップ研究者のほとんどは後天的に身につけられる
としている。
リーダー経験というのは最初に必ずうまく行かないものだ。
この本では野球のバッティングにたとえていて、打席に立ってバットを振ってもほとんどの人は玉に当てることはできないだろう。この最初の失敗の経験だけで才能がない!と思いこむのは大きな間違いだと分かる。
リーダーシップも同じようなもので、会社や学校でリーダーをやってくれといわれて、いきなりうまくチームをまとめて、組織目標達成を果たせる人は少ない。
理論がわかってても、経験がなければほとんどうまく行かないだろう(プロ野球観戦が好きな人がプロ野球選手並みにバッティングできないように)。
最初の苦い経験だけを理由にリーダーシップから目を背けるのはもったいないことだ。失敗を糧に状況を診断し、行動を適応させ、チームに意思疎通
する。
このサイクルは状況対応リーダーシップだ。
なんとなくリーダーシップは技術なのかと思っていたところ、後天的に身につけられる能力と言い切ってくれたのはこの本を読んでありがたい気持ちになった。
ちなみにリーダーシップは最初必ず失敗するというような話は、スーパーエンジニアへの道という本にもまとまっている。
まとめ
ひとまず第一章だけで、いい内容だと思ったことを削りまくってこのボリューム感だった。
この章自体は 23 ページと非常に短い割に、これだけ学びがあるので、多くの人に読んでほしいと感じている。
この要約を完走できるよう引き続き本の読み込みとまとめのアウトプットを進め、より深く行動科学の展開を理解し、組織開発能力を向上していきたい。
続きの第 2 章はこちら。
行動科学の展開の要約 第 2 章 意欲と行動 人間行動の理論と欲求について