行動科学の展開の要約 第 2 章 意欲と行動 人間行動の理論と欲求について

入門から応用へ 行動科学の展開【新版】―人的資源の活用を読了しました。2020 年読了本 31 冊目。

行動科学の展開を章ごとに要約していくシリーズです。前回はこちら。

行動科学の展開の要約 第 1 章 マネジメント

続いて第 2 章の「意欲と行動」を要約します。

最初のまとめ

この章では主に次についてまとめています。

概要

人間の行動はどのような理論で、何を動機に行動しているのかを学んでいく章です。この理論がわかれば、人的資源は有効活用しやすくなります。

人間行動の理論

人間行動は章の最初に次の公式で表されている。

B = f(P, S)

これは何かというと、Bは行動(behavior)を表している。次のfは関数(function)、Pは人間(person)、Sは状況(situation)だ。

読み解くと、人は置かれた状況によって行動をするという公式になる。

人間行動はもともと目的志向的であり、その目的とは何かというと欲求を満たすための動機となる。そのため、組織論において、個人の目的、さらに深堀りして欲求は何かを明らかにすることは重要だ。

動機の変化

動機の強さは状況によって変化する。

喉が乾いたときに水を飲みたいという動機は強いが、水を飲んで喉を潤した後は水を飲みたいという動機は弱くなる。

基本的に充足されると欲求が弱くなるため、最初の公式にある状況(situation)をよくよく観察することは重要だ。同じ人間(person)だと考えていても、あるタイミングの最強動機と今目の前にいる人間の最強動機が同じとは限らない。そのため、週ごとの 1on1 や評価での定期的なフィードバックをする必要がある。

動機が行動の理由になるため、動機に変化を与えなければ行動を変化させることができない。

動機を変化させるには欲求を充足させる、阻止する、強化するなどがある。ただし、阻止は危険な手段で必ずしも欲求が減退するわけではなく、代替行動を取る場合がある。

本から引用で阻止の代表的な働きかけとして懲罰がある。

懲罰は不適行動の除去につながるばかりでなく、行動固定化やその他の欲求不満にもつながる(略)どのような結果に結びつくか予想しにくい懲罰は、管理手段として危険かもしれない。

一部例外を除き、一般的な多くの組織において懲罰が気軽に行われない理由は上記による。

組織からの公式な懲罰はもちろん、無視や公の場で叱るなどといったいわゆるパワハラを行うことは、目の前の不適行動を除去したように見せかけるだけでむしろ行動固定化が促進されたり、欲求不満を抱えかねない。

そのため、動機の変化をさせるには充足をさせたり、動機を強化して最強動機にするなどが動機の変化、ひいては行動の変化を起こすのに重要になる。

労働者は何を求めているのか

マズローの欲求五段階説で知られるマズローによると、未充足の欲求が"最強欲求"である。そのため、何が充足されていて、何が未充足かを知ることはマネージャーの重大な仕事である。

少し古い調査があるが、マネージャーと非マネージャーの組織に対する最強欲求の意識調査を取り上げている。その中ではマネージャーが考える非マネージャーが求めているものと、実際の非マネージャーが求めていることに差分があることに注目している。

社会全体の経済状況などにより多少の変化があるが、非マネージャーは仕事の評価や個人的問題への理解などを求める傾向にあるとのことだ。個人によって最強欲求は変わってくるが、マネージャーは個人ごとの理解を組織に求められていることを理解するべきだと感じた。

感想

本のタイトルにある行動科学の展開をするために、行動科学の基本を抑える章だと感じた。

人が行動するのは動機があり、欲求が何かを突き止める必要があると改めて感じされられる。問題行動を止めるために、行動自体を阻止したり罰したりするのは一時的な対策にしかならない。

このような話は学習する組織入門にもあり、表出する行動に対し、表出していない欲求はメンタル・モデルと呼ばれている。この本の 2 章では欲求の理解が重要としか書いていないが、具体的に欲求を理解した上で、どのように変えていくべきかは学習する組織入門にまとまっているので、そちらも参照してほしい。

まとめ

行動の理論とは何で、なぜマネージャーは行動理論を知る必要があるのかがまとまっている章。チームや組織がうまく行かないと感じているマネージャーに読んでみてほしい内容だった。

続きの第 3 章はこちら。

行動科学の展開の要約 第 3 章 意欲を育む状況条件