行動科学の展開の要約 第 4 章 リーダーシップ 展望
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入門から応用へ 行動科学の展開【新版】―人的資源の活用を読了しました。2020 年読了本 31 冊目。
行動科学の展開を章ごとに要約していくシリーズです。前回はこちら。
行動科学の展開の要約 第 1 章 マネジメント
行動科学の展開の要約 第 2 章 意欲と行動
行動科学の展開の要約 第 3 章 意欲を育む状況条件
続いて第 4 章の「リーダーシップ 展望」を要約します。
最初のまとめ
この章では主に次についてまとめています。
- リーダーシップの定義
- 成功したリーダーに共通する特徴
- 最善のリーダーシップスタイル
概要
リーダーシップに関する内容です。
次の 5 章でもリーダーシップについて取り扱っていますが、この 4 章は副題として展望
とあります。副題のとおり、リーダーシップには展望を想像し、実行する能力が求められるという事実についてまとめられています。
リーダーシップの定義
マネジメント文献の著作者が定義するリーダーシップの定義がいくつか紹介しています。リーダーシップに関する複数の定義から共通項を取り出すと、次のようになります。
- 与えられた状況で、
- 目標達成のため、
- 個人・集団に対し、
- 影響を及ぼすプロセス
この本ではリーダーシップの定義を次のように表しています。
L = f(l, f, s)
2 章で紹介した人間行動の理論と同じような公式です。
L が発揮されるリーダーシップ。
f は関数(function)を表します。
l はリーダーその人自身。
f はフォロワー。
s はシチュエーションで状況です。
この定義にあるとおり、優れたリーダーシップとはリーダーその人自身だけで評価できるものではありません
。
フォロワーがいて、状況ごとにリーダーの行動がリーダーシップとして発揮されるので、あるときはよかったリーダーの行動が別のフォロワー、別の状況になるとよくないリーダーシップになり得る
ということをよく表している公式だと思います。
各論文のリーダーシップの定義もなかなか納得感が高く、特に腹落ちした定義をひとつだけ紹介します(それ以外は本を読んでください)。
状況の中で、特定の目的、ないし目標の達成のために、コミュニケーション・プロセスを通してふるわれた影響力である。
Robert Tannenbaum
Irving R. Weschler
Fred Massarik
コミュニケーション・プロセスを通して
という部分が納得感を高めていて、一方的な押し付けはリーダーシップではない
ということが表されていると思っています。
成功したリーダーに共通する特徴
定義はわかった。じゃあ、リーダーとしてどうすれば成功できるのか?という疑問に対して、成功したリーダーに共通する特徴という観点から示唆を得ることができます。
この本では成功したリーダーに共通する特徴として、次の 4 つを上げています。
1. 関心の管理 結果や目標の感覚、またはフォロワーを引きつける方向を説明・伝達する能力
2. 意味の管理 明快に、かつ理解できる意味を想像し、これを説明・伝達する能力
3. 信頼の管理 信頼的、一貫性を示す能力
4. 自己の管理 己を知り、己のスキルを、長所短所を踏まえて、能力いっぱいに使う能力
先に上げたリーダーシップの定義にあるとおり、コミュニケーション・プロセスを通
す必要があるので、説明・伝達する能力が重視されています。また、一貫性を持ち、自己分析を行って、長所だけでなく、短所も見極めないといけないことが見てわかります。
成功した特徴以外にも、リーダーとしてうまく行かない人に共通する特徴も取り上げています。
リーダーシップには信頼感が必要です。
— 24guchi (@24guchia) December 3, 2020
リーダーシップは先頭でビジョンを描いて、ビジョンに向けてチームを導く(lead)ためにメンバーに背中を見せて歩くイメージなので、相互信頼がないと達成し得ないと考えてます。 https://t.co/Qpvmx0UGmP
先日、上記ツイートをしましたが、うまく行かなかったリーダーの特徴として、他人に鈍感
や信頼感のなさ
などが上げられています。そのため、信頼感無しにリーダーシップがあり得ない
というのはマネジメントに関する研究では、すでに結果が出ていたりします。
最善のリーダーシップスタイル
小難しいことはいいから、どういうリーダーシップスタイルを取ればいいのか?と結論を急ぐ人には残念ですが、唯一最善のリーダーシップスタイルはありません
。
本から引用すると、
リーダーシップが、本来、状況対応的であり、状況呼応的
だからです。
先のリーダーシップの定義にもあるとおり、状況に応じていいリーダーシップ、悪いリーダーシップが変わります。まったく同じ状況というのはありえません。そのため、こうすれば絶対にリーダーとして成功するというのは存在しません。
人間行動の理論やリーダーとして成功した特徴というのは存在するため、状況ごとにどのようなリーダーシップをふるうべきかという理論が、状況対応リーダーシップです
。
感想
成功したリーダーの特徴は、かなり納得感のある特徴だと感じた。ほとんどの人はよいリーダーも悪いリーダーも見たことがあると思うので、実感を持って多くの人の共感を得られると思う。
この記事では成功したリーダーの特徴しか上げていないが、この 4 章で紹介されている失敗したリーダーの特徴も納得感が高い。今まで、僕が離れていったリーダーは失敗したリーダーの特徴を持っていたと思う。
ふるうべきリーダーシップは状況に応じて変わってくるが、リーダーとなるのであれば最低限行うべき 4 つの管理と、行ってはいけないリーダーの行動も知ることができる。
僕が前職でリーダーをしていたときは、たまたまこの 4 つの管理ができていたと思うが、具体的なテキストに起こされることでより深く理解ができた。引き続き、 4 つの管理を行い、失敗したリーダーの特徴にならないよう努力していきたい。
まとめ
ふるうべきリーダーシップスタイルは状況に応じて変わるが、最低限押さえておくべきリーダーとしての特徴がまとまっていて、非常に示唆に富んだ内容だった。よいリーダー・悪いリーダーの特徴を知ることで、自分がどう振る舞うべきか知ることができる。これからリーダーになる人、リーダーをやっている人も改めて読んでみてほしい内容。